コラム
COLUMN
非接触・高精度な静脈認証で実現する安全な入退室管理
静脈認証は、体の内側にある静脈のパターンを利用することで、非接触かつ高精度な本人確認を実現する生体認証技術です。衛生的かつ偽造が困難な静脈認証は、オフィスや病院、研究施設など、セキュリティ性が求められる現場の入退室管理に用いられています。

◎非接触で安全な静脈認証の仕組み
静脈認証は、人の手や指の中を流れる静脈の形を読み取って、本人かどうかを判断する技術です。静脈の形や流れ方は、人それぞれで違っていて、右手と左手で異なるのはもちろん、指によっても静脈のパターンは変わります。一卵性双生児でも同じにならないほどの個人差があるため、静脈認証技術は正確に本人を特定することができます。静脈認証では、「近赤外線」と呼ばれる目に見えない光を使って、静脈を映し出しています。認証リーダーに手や指をかざすと、近赤外線が照射され、その光が皮膚を通り抜けて体内の血管に届きます。血液の中には還元ヘモグロビンという成分が含まれており、近赤外線を吸収する性質を持っています。そのため、静脈がある部分は光を吸収して暗く映り、周囲と区別できるようになります。このようにして浮かび上がった静脈のパターンを、リーダーに内蔵されたカメラで撮影し、静脈の分岐点や流れ方などの特徴を抽出して、点の集まりとしてデータ化します。最初に登録したときの静脈データと、認証する際に新たに読み取ったデータを比べて、一致していれば「本人である」と認証され、ドアの解錠やセキュリティゲートを通過できます。静脈を読み取る方法は2つあり、ひとつは反射方式で手のひら側に近赤外線を当てて、跳ね返ってきた光を読み取り、静脈のパターンを確認する方法です。もうひとつは透過方式で、手の甲側から近赤外線を当てて、その光が手を通り抜けた先にあるセンサーで受け取ることで、内部の血管の様子を映し出します。どちらの方式も、還元ヘモグロビンが光を吸収する性質を利用して、静脈を明確に浮かび上がらせることができます。静脈認証は、血流がある状態でなければ正しく読み取ることができません。つまり、生きている人の体でないと認証ができない仕組みになっているため、写真や模型では認証をすり抜けることができません。体のなかにある情報を使っていることから、指紋のように触れたあとに情報が残ったり、カードのように盗まれたりする心配も少なく、安全性が非常に高いとされています。また、静脈認証は非接触で行える点も大きなメリットです。手や指をリーダーに軽くかざすだけで認証できるため、装置に触れる必要がなく、衛生面でも安心です。多くの人が使う場所でも清潔さを保ちやすく、感染症対策にも向いています。さらに、静脈のパターンは年齢を重ねても大きく変わらないため、子どもから高齢者まで年齢を重ねても利用することができます。このような仕組みにより、静脈認証は高い信頼性を持つ認証方法として、セキュリティ対策が求められるさまざまな場所で活用されています。とくに、手のひら静脈認証は非接触で認証が行えるため、認証リーダーに触れることなくスムーズな入退室が可能です。個人ごとに異なる血管パターンを利用していることから、偽造や不正ななりすましが非常に難しく、高度な本人確認を必要とする場面に最適です。このため、静脈認証はオフィスビルや病院、研究施設、サーバールームなど、セキュリティレベルの高い建物において、自動ドアやゲートと連動した入退室管理システムに多く導入されています。カードのように紛失や盗難の心配がなく、暗証番号のように覚える必要もないため、利用者にとっても扱いやすく、衛生面でも安心できる認証手段として注目されています。


◎非接触で高精度な認証が可能な手のひら静脈認証
手のひら静脈認証とは、人の手のひらにある静脈のパターンを使って本人確認を行う生体認証のひとつです。手のひらの内部には、目には見えませんが複雑に枝分かれした血管が広がっており、その形や流れ方は人それぞれ異なります。一卵性双生児であってもまったく同じ静脈パターンにはならず、また年齢を重ねても基本的に変化しないため、長期間にわたって安定して使える本人確認方法とされています。手のひら静脈認証の仕組みとしては、まず手のひらを認証リーダーにかざすと、近赤外線が照射されます。この光は皮膚を透過して手のひら内部の血管に届き、血液のなかに含まれる還元ヘモグロビンという成分が光を吸収する性質を利用して、静脈の部分だけが黒く浮かび上がります。認証リーダーはこの黒く映った静脈のパターンを画像として取り込み、あらかじめ登録されていた本人の静脈データと照合することで、本人かどうか認証を行います。手のひらには多くの静脈が通っており、認証に使える情報量が多いため、指と比較しても得られる情報が豊富で、より精度の高い認証が可能です。とくに、静脈は皮膚の内側にあるため、汚れや傷の影響を受けにくく、乾燥や汗などの外的要因によって認証精度が落ちることも少なくなっています。また、手のひらは日常生活であまり損傷を受けにくい部位であるため、静脈パターンが安定しており、経年変化にも強いというメリットがあります。手をかざすだけで認証が完了するため、高齢者や子ども、体の不自由な方でも使いやすく、非接触で衛生的な点からも高く評価されています。直接触れずに認証が行える手のひら静脈認証は、公共施設や医療機関、企業の出入り口などでも安心して導入できる方法として注目されています。手のひら静脈認証は、とくに入退室管理の場面で高く評価されています。セキュリティレベルが求められるオフィスや病院、研究施設、データセンターなどにおいて、認証リーダーと自動ドアやセキュリティゲートを連動させることで、登録された人物だけが通行できます。静脈パターンは、体の内側にあるため、偽造や複製が極めて困難であり、外部からのなりすましを防ぐのに非常に効果的です。さらに、静脈情報は顔や指紋のように表面に見える情報ではないため、プライバシーの面でも安心です。情報の盗難や悪用のリスクも低く、セキュリティ性と利用者の安心感の両方を兼ね備えた認証方式といえます。手のひら静脈認証は、セキュリティ・操作性・衛生面・信頼性といった多方面の要素で優れており、入退室管理における本人確認の手段として非常に効果的です。今後さらに、安心・安全な環境づくりのために多くの現場で活用されていくことが期待されています。

◎まとめ
静脈認証は、認証精度やセキュリティ性の高さ、衛生面でのメリットなど、優れた特徴を持っています。施設や病院、企業において機密情報が多い部屋の入退室管理など、重要な場面での導入が進んでいます。セキュリティゲートや勤怠管理と連携することで、業務効率の向上や不正入室の防止にもつながります。